「長谷川、風邪を引く」

ここ一、二年ほど、ちゃんと風邪を引いていなかった。


ステージに立つ身ですから体調管理、特に喉にはそれはもう恐ろしいほど神経質になり、最優先事項として対処しているわけで、少しでも喉に違和感を覚えるとその場でさっとあらゆる手を尽くして食い止める。


電車の中でのマスク着用や食事前、帰宅後の手洗いうがいは予防策にも入らない当然の義務。

喉の異変を覚えた初歩段階では、普通の蜂蜜よりも殺菌作用が高いと言われるマヌカハニー、まずはこれを舐めるわけです。これがまた結構なお値段するんですねえ。


続いて、本来はぜんそく持ちの人が持ち歩く携帯用吸入器で大事にケア。この吸入器に入れるのは普通の水ではなく生理用食塩水と呼ばれるもの。ボクはオムロンというメーカーのものを愛用しているのだが、ついこないだテレビで尾崎亜美さんがボクと同じ吸入器を片手に収録スタジオに登場するシーンを目撃した。

岩崎宏美さんも使っているという噂も聞いたことがある、やはり歌い手には必須アイテムの一つのようだ。尾崎さんがそれを持ってテレビ画面に現れた時、思わず『オソロやーん!』と声が出た。


そしてのど飴を舐め続ける。起きている間はとにかく舐め続ける。重宝している「龍角散のど飴」は週に一袋のペースでなくなる。

寝る時には漢方を飲み、加湿器の強さをマックスにしてマスクを装着して眠りにつく。目覚めた時には必ずマスクはどこか足元辺りに行ってしまっているが加湿器がフル回転してくれているから、まァ大丈夫だと思う。

 

加湿しすぎて部屋の天井に水滴が溜まって大変なことになることもしばしば。

いつもならこれで次の日にはアラ不思議、綺麗さっぱり元通り! めでたしめでたし! のはずなのだ。いつもなら・・・。


今回の風邪はとても強かった。

 

返り討ちに遭った気分だ。


この一週間後には福岡初の単独ライブが控えており、それに向けたCSFケーブルステーション福岡さんの密着取材も大詰め、さあいよいよだ! という最中での風邪。


ボクはこれまでの活動の中で本番前に風邪を引いたり体調を崩すこともあったが、それでもステージを空けることだけは、何が何でも、絶対に嫌だった。だからどんな状況であろうとステージを休んだことはない。もちろん今回も同じだ。風邪を引いているのはあくまでもこちらの勝手な都合で、関係者スタッフの皆さんはじめお客様にはまったく関係のないこと。


そして挑んだ本番。


本番までの一週間ありとあらゆる手を尽くして喉の痛みは完全に引いたものの、鼻声だけは治らなかった。実は喉が痛くても一時間ほど歌うのならさほど支障はない。終わってからのケアは相当しっかりやらなければならないが、前述の龍角散のど飴を舐めながら歌えば痛みも和らぐので問題はないのだ。

だが鼻づまりとなると声そのものが変わってしまう。これほど悔しいことはなかった。

この悔しさがバネとなりいつもよりトークが燃えて一時間の予定が三十分もオーバーしてしまった。トークのほうに力を入れてどうする(笑)

 

会場は有難いことに満員のお客様で、終演後にお見送りしていると本当に嬉しい言葉の数々をいただいた。


きっと今回のステージが次のステージの糧に、そして大切な経験になると思いながら。